第8章:自分で作るか、外部から買ってくるか
第8章:選ぶべき道の分岐点
ある日、リナは新しいデザートメニューを考案中だった。
彼女の頭の中には、かわいらしさを存分に表現したタルトのアイデアが浮かんでいた。
しかし、そのタルトの生地を自分でつくるためのオーブンの高さに頭をなやませているのであった。
もう一杯コーヒーをもらおうとリナに話しかけようととしたヨシダさんは、リナのノートに描かれているタルトの絵を見て
「これはまたお店が盛り上がりそうな商品だね。いつから店頭に並ぶんだい?」
とリナに問いかけた。
考え事に夢中になっていたリナはびっくりして少し飛び跳ねてしまった。
「なんだー、驚かせないでくださいよー。」
「まだまだアイディア段階で、タルト生地を作るオーブンを買うためのお金をどうしようか考え中というところです。」
ヨシダさんは、おやおやと思いながら聞いてみた。
「リナちゃん、もしかしてケーキのやタルトを作るのに必要な機材を全部自分のお店で準備しようとしているのかい?」
「そうですね。やっぱり自分でこだわった材料を使いたいので。タルトはやったことないけど、うまくいく気がするんです!」
ヨシダさんはリナの前向きな姿勢に感心しながらも、冷静に言った。
「リナちゃん、今お店が盛り上がってきているし、新しいことにチャレンジすることはとても大事なことだと思う。」
「私のお店でも新しいオーブンがあればいろいろなことができるなと思う時はたくさんあるよ。」
「ただ、『うまくいかなかったときのリスク』というのは考えたことあるかい?」
「うまくいかなかったときのリスク…怖くて考えたくないし、実際考えてないですね。目の前でいっぱいいっぱいで」
「それだったら今回のタルト生地のことを題材で考えてみるのはどうだろうか。」
「さっき言ったリスクというのは、『タルトがほとんど売れなくて、作っても仕方なくなってしまったとき』のことなんだよ」
「その時、高いお金を払って買ったオーブンが全く使われなくなったとき、とてももったいないことをしてしまったと思ってしまわないかい?」
上手くいくことばかり考えていたリナも少し神妙な面持ちで考えた。
「確かにそうですね。どれくらい使うかも考えずに買ってしまって、持て余してしまったときはすごく後悔しそう。」
「この時ってどう考えたらいいんですか?」
ヨシダさんは丁寧に説明するために、順を追って話し始めた。
「はじめはなるべく自分のお店で固定費を持たないようにすることが大事だよ。納得できるタルト生地を販売している業者さんを見つけて、そこから購入して作り始めるというのがいいと思う。」
「実際に店頭に出してみて、お客さんがどれくらい買ってくれるのかが分かってくると、次第に毎月何枚くらいの生地が必要なのか予測が立てられるようになるんだ。」
「たくさん生地を使うようになると、『自分で作った方が安い』というタイミングが訪れるんだ。」
「その時に初めて自分のお店でオーブンを買うかどうか考えてみたらいいと思うよ。」
リナはうなずきながら言った。
「私もタルト生地を仕入れて作ろうと思ったけど、単価が高いなー、と思ってはいました。」
「ただ、教えてくださったリスクを考えると、うまくいかなかったとき『仕入れなければすぐ撤退できる』って思えるのは安心するかもです。」
状況をつかみ始めたリナは続けざまにヨシダさんへ質問した。
「『自分で作った方が安いタイミング』というのは、仕入れ値と何を比較したらわかるんですか?」
ヨシダさんはリナの理解の速さに驚きながらも説明を始めた。
「そのタイミングを見極めるためには、自分で作った場合の原価を計算してみる必要があるね。」
「お店の直接材料費、直接労務費、そして間接経費を全て足し合わせるんだ。今回だったらオーブンに関するコストが大きなテーマかもしれないね。」
「自分で作ったときの原価は、ひと月で何枚生地が必要かによって変わってきてしまうのだよ。材料をたくさん仕入れれば安くなることだってあるし、いっぺんに作った方が効率が良かったりもするからね。」
「だからタルトの売れ行きがつかめてきてから考えるのが良いって言ってたんですね。」
リナはここまでの話がつながったことに喜びを隠せなかった。
「ご明察!だからまず『どのくらい必要なのか』ということを、お店として大きなリスクを背負わずに調べるところから始めてみようか」
リナは感謝の言葉を口にした。
「なにから取り掛かればいいのかよくわかりました!タルトを成功させる自身はあるけど、過信はダメですね!小さく始めて大きく育てます」
「うまくいき始めたらヨシダさんには『仕入れた生地か私が焼いた生地か』のクイズにチャレンジしてもらいますからね!」
「タルトは楽しみだけど、絶対に間違えられないクイズは恐ろしいな。楽しみにしているよ。」
ヨシダさんは珍しくそそくさとリナの店を後にするのであった。
「自社生産 vs. 外部調達」コストの比較方法
製品やサービスを提供する際、必要な部品や材料を自社で生産するか、外部から調達するかという選択は、経営者やマネージャーにとって一つの大きな課題となります。では、これらのコストをどのように比較すればよいのでしょうか?この記事でその方法について詳しく見ていきましょう。
1. 自社生産のコストの計算
まずは自社での生産コストを計算します。この計算には以下の要素が考慮されるでしょう。
- 直接材料費:製品や部品を生産するために必要な原材料のコスト
- 直接労務費:製品や部品の生産に従事する労働者の給与や賃金
- 間接経費:製品や部品の生産に関連するが、直接的には計算できないコスト(例:製造設備の維持費、工場の電気代など)
2. 外部調達のコストの計算
外部からの調達コストは、比較的シンプルに見えるかもしれませんが、以下の要素も考慮する必要があります。
- 購入価格:外部のサプライヤーから製品や部品を購入する際の価格
- 輸送・運搬費:購入した製品や部品を自社に運ぶ際のコスト
- 検査・品質管理費:外部から購入した製品や部品の品質を確認するためのコスト
3. その他の考慮点
コストだけでなく、以下の要素も考慮することが推奨されます。
- 品質:自社生産と外部調達での品質の違いはあるか?
- 納期:外部のサプライヤーは納期を守ってくれるか?
- 柔軟性:需要の変動に対する対応の速さや柔軟性はどうか?
4. 意思決定
上記の要素をすべて考慮し、トータルのコストと利点を比較して、最も効率的で利益を最大化できる選択をします。
まとめ
自社生産と外部調達のコスト比較は、単に数字だけで判断するのではなく、品質、納期、柔軟性などの要因も総合的に考慮する必要があります。正確なデータ収集と綿密な分析を行うことで、最適な選択を下すことができるでしょう。