原価計算を超えて:意思決定の本質を見抜くために必要な視点

日々の業務で「作問・採点」の仕事を通じ、様々な人の答案を目にする機会があります。中には、計算問題や記述問題といった多様な課題がありますが、その中で特に注目したいのが「計算結果に基づいてどのように意思決定を行うか」を問う問題です。

この記事では、こうした問題に対するアプローチと、その背後にある意思決定の本質について掘り下げていきます。

原価計算の意義とその落とし穴

計算問題において、例えば「Aの原価とBの原価を比較し、どのような意思決定を行うか考えなさい」といった指示が与えられることがあります。問題の指示が「原価を比較する」とある以上、AとBの数値を計算し、どちらの原価が高いか低いかを判断するのは当然です。しかし、計算に集中するあまり、つい「計算結果が最終結論」となってしまうケースが見られます。

例えば「Aの原価 > Bの原価だから、Bの製品を採用すべきだ」という結論に至るのは、一見理にかなっています。しかし、その判断は果たして意思決定のすべてを反映しているでしょうか?このように、計算に力を注ぎすぎるあまり、その計算の「目的」を見失うことが、よくある落とし穴なのです。

意思決定における計算の役割を再考する

原価計算の結果が重要であることは間違いありません。しかし、これだけに囚われてしまうと「本来の目的」を見失うことになります。例えば、Aの原価がBの原価より大幅に高くても、Aを採用するケースは多々あります。これは、原価以外の要素—例えば品質、納期、将来的なコスト削減の可能性など—を総合的に考慮した結果です。

意思決定は「どちらの原価が高いか」という単純な判断を超え、目的達成のための最適解を見つけ出すプロセスです。そのため、計算自体を意思決定の最終目的と考えず、むしろ「計算は意思決定材料の1つにすぎない」と捉えることが重要です。原価計算は道具に過ぎず、それをどう使いこなすかが、意思決定者の力量を問う本質的なポイントとなるのです。

意識すべきは「何を目指すための意思決定か」

計算を終え、数値を比較した段階で安心するのではなく、「何のためにその計算を行ったのか」「意思決定を通じて何を達成したいのか」を再確認しましょう。目的が明確であれば、仮に「Aの原価 > Bの原価」であっても、別の選択肢を選ぶことも十分にあり得ます。意思決定は、常に「何を目指すか」を考え続けることが求められます。

結論として、計算の過程や結果に力を使い果たさず、その先の「本質」を見据える視点を持つことが、真に効果的な意思決定につながるのです。原価計算はあくまでスタート地点に過ぎません。その後の判断や戦略を通じて、どのような付加価値を生み出すかを考えることで、意思決定の精度は大きく向上します。

ではまた!

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