第2章:経営において原価計算が大事な理由
第2章:目に見えづらい原価の存在
リナのカフェは軌道に乗りつつあったが、いつも感じる疑問がひとつあった。
彼女はヨシダさんに言った。「ケーキやコーヒーの原価を知るのは大切だとおっしゃっていましたけど、それだけで本当に色々変わるのでしょうか?」
ヨシダさんはゆっくりとコーヒーをすすりながら答えた。
「材料にいくらかかっているかが一番わかりやすいと思うんだ。モノとお金の関係がはっきりしているからね。」
「ただ、それだけで全てを把握できるわけではないんだよ。経営の世界には『目に見えづらい原価』がたくさん存在するんだ。」
リナは疑問だらけの顔でヨシダさんを見つめた。「目に見えづらい原価」って何ですか?」
「例えば、電気代や水道代、店舗の家賃やスタッフの給料。これらも商品を提供するための原価の一部なんだよ。そして、これらの原価も考慮に入れて商品の価格を設定することが原価計算の真髄なんだ。」
リナは驚きの表情を見せながら言った。
「そうだったんなら、これまで考えていた原価は全然少なかったってことになってしまいそうですね。」
ヨシダさんはうなずきながら言った。
「そう、原価計算をしっかりと行うことで、いくらで商品を提供すべきか、結果としていくら利益を出してくれるのかが見えてくるんだよ。それらを積み重ねていって、お店をどうしていこうかという作戦を立てることができるんだ。」
リナは真剣な表情でヨシダさんを見つめた。
「これからは、目に見えない原価も含めて、本当の原価計算をできるようにしていかないといけないですね。」
「お店が大きくなった時に、一緒に働いてくれるスタッフも豊かになれるような店づくりのスタート地点に立ったきがします!」
ヨシダさんは微笑みながら言った。
「それが良い経営者の考え方かもしれないね。まずは自分から、そしてより多くの人を幸せにできる瞬間がとても嬉しいものだよ。」
「とはいえ、まずは材料費をしっかり見直してみるところから始めてみますね。手を広げすぎちゃって訳がわからなくなっちゃうと怖いので…」
リナははやる気持ちを抑えて、1歩ずつ着実に進んでいく決意をしたのであった。
原価計算は、経営の核心に関わる要素であり、多くの企業で重視されています。
しかし、その価値を理解することは容易ではありません。
ここでは、原価計算の重要性について書いていきます。
経営において原価計算が大事な理由とは
1. 正確な価格設定のため
原価計算は、製品やサービスの生産・提供にかかる実際原価を明らかにします。これにより、市場での競争力を保ちながらも十分な利益を確保するための適正な価格を設定することができます。間違った価格設定は企業の収益性を損なうだけでなく、ブランドイメージにも影響を及ぼす可能性があります。
2. コスト削減の指針として
原価を具体的に分析することで、無駄なコストが発生している部分に気づくことができます。
これをもとに、コスト効率の良い生産方法や新しい供給先の選定、無駄の削減などの施策を策定・実行することができます。
3. 競争力の向上
原価計算は自社がどれだけのコストで製品を生産・提供できるかを明確するため、競合との価格競争の検討に役立ちます。
それは自社の市場における立ち位置を明確にし、自社の競争優位性を高めるための行動へとつながります。
4. 予算策定の基盤として
将来の経営計画や投資計画を策定する際、原価計算のデータは非常に重要となります。
実際の原価情報を基に、効果的な資源配分や投資利益率の高い投資案件を選択することが可能となります。
5. 製品・サービスの品質管理
原価計算を行うことで、製品やサービスの原価構造を詳細に把握することができます。これにより、コストと品質のバランスを比較検討することができるようになります。例えば、安価な材料を使った場合の品質と高価な材料を使った場合の品質を比較し、原価が上昇するに見合った品質向上を実現できているか検討することが可能となります。
原価計算は、単に「コストを計算する」行為を超えて、企業の競争力を向上させる重要な武器です。
原価実態を適切に反映した原価計算を行うことは、企業は持続的な成長と安定した利益を追求することを実現するのです。